此処は、人の道の迷子になってしまった『月の雫』が蹲っている場所です。 『月の雫』の心の葛藤の物語と詩を、絵と写真を添えて綴っています。
ありがとうが言えない(3)
こんな風だから、自分が当たり前だと思ってやっていることや、
助けなしでもなんとかやれる事を、
褒められても手助けされても嬉しくないんだと思う。
私の祖母が、何でも褒める人だった。
でも祖母はこれと言って特別な知識も教養も才能もない、
祖母の時代なら致し方ないことではあるが、
本当に何にも知らない人だった。
そんな祖母に、できて当たり前のことを褒めちぎられても、
私はちっとも嬉しくなかった。
褒められれば褒められるほど、
分が出来損ないだと蔑み皮肉られているようで、
ただただ惨めな気持ちになったのを憶えている。
人の好意を心から素直に受け容れることは、
私にとってとても難しい課題だ。
だが、子どもの頃から本音を文字に綴ってきたせいか、
文章での気持ちのやり取りは素直に受け容れてしまうところがある。
これは文面だけで人を判断しかねないということで、
ともすると本当は下心と悪意に満ちた人間を、
善人と勘違いしかねないということでもある。
やさしい言葉を並べ本性を偽装した文章に惑わされ、
騙されないようにしなければと思う。
そういえば、人に何かをして貰ってもあまり嬉しくないのは何故か、とか、
何かをして貰っても心から感謝の気持ちが浮かばないのは何故か、とか、
そんなことを考えてふと気付いたこと。
私は何かをする時、本当は一人じゃなくて、
誰かと一緒にやりたいんだと、思った。
子どもの頃の炊事や膨大な量の食器の後片付けも、
母と一緒にやっている時は決して嫌じゃなかったし、
農作業や家畜の世話も誰かと一緒にやっている時は、
決して嫌じゃなかった。
寧ろとっても、とっても楽しかったな…。
そんなことを思い出した。
お終い
TITLE:さりげなく…在る