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此処は、人の道の迷子になってしまった『月の雫』が蹲っている場所です。 『月の雫』の心の葛藤の物語と詩を、絵と写真を添えて綴っています。

   
偶然に意味はあるか(2)

偶然に意味はあるか(2)

彼女は人の情にとても冷めていて、割り切りがよかった。
つまり人間への対応が非情に事務的なのだった。
そしてプライベートでは徹底して、外部とは必要以上の接触をしなかった。


そんな彼女がこの仕事をしていること、同様にこの仕事に向いているとは思えない雫がこの仕事をしていること、更に珍しい姓の一致という偶然は、その間に何か運命的なものでもなければ成り立たないようにさえ思えた。
だからこそ雫は、10
年以上もこの仕事を続けていられるのだろう。
雫は彼女の、人に媚びない仕事上のスタンスと揺るぎないポリシーに惹かれていたように思う。
なぜならこの職は寧ろそういうものは必要なく、というより邪魔と言ってもよいもので、この逆のスタンスでこなさなければ長続きしないといっても過言ではないのだ。
この仕事に携わる殆どの女性は、当然のことながら彼女と真逆だった。
それほどこの経営者はこの職種に於いては人間的には不向きな浮いた存在だった。


今日初めて雫は、彼女と自分の出会いの不思議を、彼女と向かい合って、それとない話の流れで話題にした。(勿論彼女がこの仕事に向いてないなどとは言えないが。)
普段は世間話ばかりで、プライバシーに関わる話は殆どしたことがなかった。
初めてしたプライベートな会話は、しみじみと雫の心に沁みていた。
ただそれだけのことではあったが、雫にとっては運命の不思議で、どこか嬉しいプレゼントにも似た喜びが心に芽生えていたのだった。


しかし、喜ぶ雫を余所目に彼女は違っていた。
その表情は明らかに迷惑そうに曇り、表面的にでも雫との繋がりを喜ぶ嬉しそうな様子は微塵もなく、重く暗かった。
それは片思いのショックのように、雫の彼女への信頼心に、不信感という小さいながら深い傷をつけた。
雫と繋がったほんの小さな共通点は彼女にとっては受け入れ難い汚点で、潜在意識に宿る彼女ですら気付いていないプライドを傷付けたのか…

もしそうであれば、彼女にとっては雫は自分と比較して欲しくない存在で、彼女は雫を見下しているとも思えてしまう。
彼女が口でそう言った訳ではないが、雫が見てきた
10年間の彼女の人間性や性格に照らし合わせた時、雫は彼女の曇った表情をそう受け止めずにはいられなかった。


(続く…)



TITLE:一期一会の光

 

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