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此処は、人の道の迷子になってしまった『月の雫』が蹲っている場所です。 『月の雫』の心の葛藤の物語と詩を、絵と写真を添えて綴っています。

   
『月の雫』の成分(4)
『月の雫』に影響を与えた祖父の存在(8-4)
(『月の雫』以後、雫と省略)


雫が生きている祖父と会ったのは、病院でのあの時が最後だ。
入院する祖父を見舞い、仕事場のある自分の生活拠点にとんぼ返りした数日後、祖父は亡くなった。
結局、当たり前の話だが、葬式は行われ、雫はあの言葉を最後に祖父の死に目には会えず、滑り込むように葬儀に参列した。
火葬直前だった。
多分使う交通機関によっては死に目に会えたかも知れないが、特に焦りはしなかった。
何故かって、最早人への執着が薄い雫にとって、『死ぬ』も『死んだ』もそう変わらない…、どこかにそんな冷めた感情が根付いてしまっていたからかもしれない。
(命と愛に熱い信仰まがいの思想を持っている人が聞いたら、反論と怒りを買い窘められそうだが…。)

生前祖父が、遠く離れて暮らす雫に、こうも言った。
「無理に帰って来なくていいからな。お金も掛かるだろうし、事故も気になる。
私は会いたい時には、何時でも夢でお前に会いに行っているから。体に気をつけて頑張りなさい。」
この言葉が、義務的に建前の行動をしなくてもいいという、ある種の束縛から雫を解放していた。
多少何か第6感なる力があるのか、正夢、逆夢、予知夢など不思議な夢を見ることがあったというのもある。
実際、雫の祖母が、結構このような力を持っていたようだけれど。
そんな理由で、「夢で会いに行く」が妙に真実味があって、自然に納得してしまったのだった。
(しかし、あれほど心底自分に関わった大切な人がこの世を去るというのに、死に目に間に合う事を、義務的な建前の行動としか考えられないといのは、やはり何かおかしい。)

それでも今までは、そのことが一般の人の思考回路と違っても、雫は特に気にしないことにしていた。
何故なら、雫は十分過ぎるほど、外面は社会に上手く対応していたし(適応ではない)、普通の人たちに違和感を感じながらも、凄く普通の人の振りをしていたと思う。
それに、そのような命を冒涜するかの如き不届きな歪曲思考を社会に主張しているわけでもなかったから。

今までは、もう一生そのように本性を押し殺して、綺麗事の人間愛思想をたっぷり持った心優しい人の振りをして生きていくんだと雫は漠然と受け入れていた。
そのうち慣れて、本当にそんな人間になれるかもしれないと、自分を騙しながら生きていくことを諦めの境地で受け入れていた。
そう、アダルトチルドレン(AC)と言う言葉を知るまでは。






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TITLE:移ろい行く執着の場所




(続く)



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